十一月二十一日

今日も糞が屹立している。
さすがにこの季節になって臭いは弱くなってきたが
鼻が曲がるのに変わりはない。
空を仰げば飽きる事無く巨人が糞を落としている。
山を喰い森を掬い川を飲み尽くす。
視界まで屹立する糞で茶色くなってしまいそうだ。
既に車は道をまっすぐ進む事をあきらめて蛇行して走る。
この街の住人も歩道すら掃除するのをとうに諦めているようで、
塔児の車椅子の車輪は既に汚れと臭いで粘ついていた。
*
巨人が(我々には尻しか見えないが)現れてから、
つまり日本が糞の国になってからというもの人は外に出なくなった。
しかし用のある者はそれでも外に出る。傘をさしかっぱをかぶり出勤する。
さすが日本人。
私だって一日中部屋に籠って本でも読んでいたいものだが
塔児がそれを許してくれぬ。
無邪気な顔で「旅行に行こう」、そう言われて断る理由があろうか。
かくして訪れた熱海で塔児は、糞などまるでないかのように明るくはしゃぐ。
そして今日も私に振り向きこう言うのだった。
「アイスコーヒー」


